世界遺産とは
 世界遺産条約は1972年にユネスコ総会で採択された条約で、日本は1992年に受諾しました。
この条約の目的は、世界的に価値の高い文化遺産や自然遺産は人類共有の財産であるとの認識に立って、それらが損壊や滅失の危機にあるとき、各国が協力してその保存を図ろうとするものです。
この目的のため、あらかじめ、条約の締約国の代表21カ国からなる世界遺産委員会は、締約国から推薦のあった遺産を審議し、その遺産が顕著な普遍的価値を有していると認められるときには、人類共有の財産として世界遺産一覧表に記載します。
この世界産一覧表に記載された遺産を一般に「世界遺産」と呼んでいます。
世界遺産のうち、文化遺産に認定されるためには、次の6つの価値基準(意訳)のどれか1つ以上に当てはまらなければなりません。

1.創造的な才能が生んだ傑作
2.建築や芸術、都市の構成や景観の発展において、ある時代や地域における人類の文化的交流の形跡を示すもの
3.ある文化的な伝統や文明の貴重な証拠となるもの
4.歴史上の有意義な時代を示す優れた建造物や建築物群、景観の例
5.ある文化を代表する伝統的集落や土地利用の典型的な例で、消滅の危機にあるもの
6.世界的に著名な事件・伝統・思想・信仰・芸術作品・文学作品と密接に関係するもの

 1995年12月現在、世界遺産条約を締約している国・地域は143カ国・地域に及び、世界遺産一覧表に記載されている遺産は、文化遺産349件、自然遺産103件、複合遺産(文化遺産と自然遺産の両方の価値を含んでいる遺産)17件、総計469件となっています。
世界遺産となっている代表的な遺産としては次のような例があげられます。

文化遺産
   アブシンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群 (エジプト)
   アテネのアクロポリス(ギリシア)
   リラ修道院(ブルガリア)
   タージ・マハル(インド)
   アンコール遺跡群(カンボジア)

自然遺産
   ガラパゴス諸島(エクアドル)
   グランドキャニオン国立公園(アメリカ合衆国)
   セレンゲティ国立公園(タンザニア)

複合遺産
   マチュピチュ遺跡(ペルー)
   ギョレメ国立公園とカッパドキア(トルコ)
   ウルルー国立公園(オーストリア)


また、「白川郷・五箇山の合掌造り集落」のように、多くの人が住んでいる生きた集落や都市の中の歴史的地区としては、次のような例があります。

人が住んでいる文化遺産
フィレンツェ歴史地区(イタリア)/ラウマ旧市街(フィンランド)
ヴルコリーニェツ伝統建造物保存地区(スロバキア共和国)
サヌア旧市街(イエメン)/メキシコシティー歴史地区とソチミルコ(メキシコ)



相倉・菅沼・荻町
 白川郷と五箇山地方は中部山岳地帯の大変険しい山間地にあり、しかも、日本有数の豪雪地帯です。
厳しい地理的・気候的条件により、近年までは外界との行き来が困難であり、そのため、この地域には独特
の文化が形成され、昔からの社会制度や民族・慣習が今日でもよく伝えられています。
この地域の中心には、庄川が1500m前後の山並みを縫い、深い渓谷を刻みながら南から北へ流れています。
山地は全て急峻な地形のため、この地域のほとんどの集落は、庄川地域に形成された狭い平坦地につくら
れています。 荻町、相倉、菅沼もそうした集落です。かつては、これらの集落には合掌造り家屋が建ち並び、
その周囲に水田や畑が広がる独特で美しい景観が見られましたが、現在ではそうした景観を残しているのは
世界遺産となった3つの集落だけとなっています



相倉集落
(あいのくら)
富山県南砺市相倉
岐阜県の山岳部に源を発し、日本海に注ぐ一級河川・庄川の川面からやや高く離れた段丘にある戸数27戸の合掌造り集落です。
集落と集落背後の雪持林を含む約18.0haが重要伝統的建造物群保存地区であり、また、集落に近い茅場などの山林を含めた地域が史跡に指定され、歴史的景観が維持されています。
合掌造り家屋20棟のほか、寺院や神社、土蔵、板倉などの伝統的な建物や雪持林、神社の社叢、畑の石垣、水路、旧道などが保存すべきものとして特定されています。



菅沼集落
(すがぬま)
富山県南砺市菅沼
相倉集落から約7km上流の庄川が北から東に流れを変える地点の右岸にある戸数8戸の小さな集落です。
集落の全域、4.4haが重要伝統的建造物群保存地区であり、また、集落と集落背後の雪持林や茅場などの山林を含めた地域が史跡に指定され、歴史的景観が維持されています。
「雪持林」は集落を雪崩から守るために木の伐採が禁じられているところです。
合掌造り家屋9棟のほか、土蔵や板倉などの伝統的な建物や神社の社叢などが保存すべきものとして特定されています。



荻町集落
(おぎまち)
岐阜県大野郡白川村荻町
相倉集落から約30km上流、庄川右岸の三日月形をした段丘にあり、3つの集落の中では戸数152戸の最も大きな集落です。
集落の全域に山麓の林の一部を含む45.6haが重要伝統的建造物群保存地区として保存され、
歴史的景観が維持されています。
合掌造り家屋59棟のほか、寺院本堂、庫裏、ハサ小屋、板倉などの伝統的な建物や神社の社叢、水路などが保存すべきものとして特定されています。
毎年春先には、集落の人たちが協力して行う茅葺き屋根の葺替え作業がみられ、季節の風物詩となっています。


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